院内勉強会(口臭について)
- 投稿日2016年09月14日
先週の水曜午後に院外講師を招いて、スタッフ向けに講習についての勉強会をいたしました。
仲の良い友達とおしゃべりしているときに相手の口臭が気になるとせっかくの楽しいひとときが台無しですよね。でも、相手の口臭は指摘しづらいものです。もしかして自分もにおうのではないかと不安になったりしませんか。そう、自分のにおいは自分ではわからないものなのです。口臭が原因でコミュニケーションがうまくとれなかったり、ときとしていじめの原因になったりすることもあるようです。最近、口臭についての関心は高まり、口臭予防商品が爆発的な売れ行きだそうです。
でも本当は誰にでも口臭はあるものです(生理的口臭)。要はにおいの強さが問題なのであって、他人が不快感を感じるレベル以下であれば良いわけです。そんなに口臭は強くないのに自分では口臭がすると思い込んで精神まで病んでしまう人がいますが、必要以上に神経質になることはないのです。
口臭について正しく理解して、口臭を予防しましょう。
口臭の原因
口臭は口の中の病気が原因で発生するものが9割以上であり、全身疾患(内科的、耳鼻科的な病気など)が原因で発生するものは1割にも満たないのです。口臭に含まれる不快なにおいの成分は20種類ほどありますが、なかでも揮発性硫黄化合物(きはつせいいおうかごうぶつ・VSC)は特有のにおいがあります。
揮発性硫黄化合物は主に次の3種類のガスからなります。
- 硫化水素(卵が腐ったようなにおい)
- メチルメルカプタン(生臭い、魚や野菜が腐ったようなにおい)
- ジメルサルファイド(生ゴミのようなにおい)
口臭はこれらのガスが混合したものなので非常に不快なにおいとなります。この揮発性硫黄化合物は口の中にいる嫌気性菌(酸素を嫌う細菌)が、はがれた粘膜上皮、血球成分、死んだ細菌などのたんぱく質成分を分解して発生します。
口臭の種類
口臭には大きく分けて3つの種類があります。
1.生理的口臭
誰にでもあるにおいで、起床直後、空腹時、緊張時は特に口臭は強まります。これは唾液の分泌が減少し、細菌が増殖して口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物(VSC)がたくさん作られるためです。しかし、歯みがきで細菌やVSCが減少し、食事をしたり会話をすることで唾液量が増加すれば急激に口臭は弱まります。したがって治療の必要がありません。
2.飲食物・嗜好品による口臭
ニンニク、ネギ、酒、タバコ等による口臭は一時的なもので、時間の経過とともに無くなりますので治療の必要はありません。
3.病的口臭
鼻やのどの病気、呼吸器系の病気、消化器系の病気、糖尿病などが原因で口臭が起こる場合もありますが、病的口臭の90%以上は口の中にその原因があり、歯周病、むし歯、歯垢(しこう)、歯石、舌苔(ぜったい)、唾液の減少、義歯(入れ歯)の清掃不良などがあげられます。このような病的な口臭の場合は治療の対象となります。
口臭の治療法
治療を必要とする病的口臭の原因には全身疾患からくるものもありますが、ごくわずか(10%以下)で、90%以上は口の中の病気が原因で起こります。ここでは口の中に原因がある病的口臭の治療について解説します。
1.歯周病
歯を支えている骨(歯槽骨)が溶けて(吸収して)無くなり、歯ぐきがブヨブヨして、出血したり膿が出たりして、だんだん歯がグラグラ動揺してくる病気、これが歯周病です。歯とブヨブヨ歯ぐきの間には無数の細菌が存在し、悪臭の原因となる揮発性硫黄化合物(VSC)を産生します。歯科医院で早く治療を受けないと、口臭は無くならずに歯が無くなってしまいます。
2.むし歯
小さなむし歯で口臭が強くなることはありません。しかしむし歯が進行してくると次第に口臭がきつくなってきます。神経まで侵されると強烈な臭いがします。むし歯が小さいうちに治療するよう心がけましょう。
3.歯垢(プラーク)
プラークは細菌のかたまりです。毎日ていねいにブラッシングしているつもりでも、みがき残しは必ずあり、プラークは残ります。定期的に歯科医院でプロフェッショナルケアをしてもらいましょう。
4.歯石
歯垢がかたく固まったもので、自分では取り除くことができません。放っておくと歯周病になります。歯科医師、歯科衛生士が超音波スケーラーやハンドスケーラーという器具を使ってていねいに取り除きます。定期的に歯科医院でチェックしてもらいましょう。
5.舌苔(ぜったい)
口臭の大きな原因となります。舌の表面に白~淡黄色の苔のようなものがついている場合があります。これが舌苔です。死んだ細胞や新陳代謝ではがれた粘膜上皮の細胞、血球成分、食物のカスなどからできています。これが細菌によって分解されて口臭の原因物質となる揮発性硫黄化合物を発生します。
舌苔除去には専用の舌ブラシかやわらかい歯ブラシ、またはガーゼなどを使用します。(舌苔はうがいだけでは取り除くことはできません)鏡を見ながら舌の奥の方から前方へやさしくみがきます。1日何回もみがいたり、力を入れすぎると舌の表面を傷つけてしまいますので気をつけましょう。
6.唾液の減少
唾液には口臭予防に関連した洗浄作用、抗菌作用、粘膜保護作用などがあります。唾液の分泌が少なくなると口の中が不潔になり、乾燥して口臭が発生しやすくなります。また薬の副作用で唾液の分泌が抑制されることもあります。一般的にはよく食べる、よくしゃべることによって唾液の分泌は促進されますが、病的な唾液の減少(口腔乾燥症、ドライマウス)も考えられます。
7.義歯の清掃不良
義歯(入れ歯)のプラスチック部分は色やにおいを吸着しますので、毎日きれいに清掃し、消毒剤に浸しておくことをおすすめします。一度吸着した色やにおいは取れません。
8.口腔ガン
口の中のガン(舌ガン、頬粘膜ガンなど)により口臭が発生することがあります。口の中に異常があれば早めに歯科医院で診てもらいましょう。
(参考)
「胃が悪いと口臭が強くなる」と考える人は多いようですが、食道と胃の境界(噴門部)は飲食物が通過するとき以外は括約筋で閉じられていますので、ゲップでもしないかぎり、胃の中の空気(におい)が口の中に出てくることはありません。
口臭の予防
口臭予防には口の中を清潔にすることが一番です。自分で毎日口の中をきれいに清掃するセルフケアと、歯科医師、歯科衛生士が定期的に清掃を行うプロフェッショナルケアが大切です。
セルフケア
- 歯ブラシ、デンタルフロス、歯間ブラシなどを使ってすみずみまでていねいにみがきましょう。
- 舌ブラシなどを使って舌苔を除去しましょう。
- 義歯(入れ歯)の清掃を行いましょう。
- 鏡で自分の口の中を見て異常がないかチェックしましょう。
- 十分な睡眠とバランスの良い食生活で規則正しい生活を送りましょう。
- よく食べ、よくおしゃべりして、楽しく、リラックスした状態で毎日を過ごしましょう。
プロフェッショナルケア
- 定期的に歯科健診を受けましょう。
- 自分の口の中にあった適切な清掃法の指導を受けましょう。
- PMTC(専門的歯面清掃)や歯石除去をしてもらいましょう。
- 歯周病やむし歯は早めに治療を受けましょう。